事業承継やM&Aには、設備投資、統合後の体制整備、仲介・FAなどの専門家費用といった、まとまった資金負担が伴います。補助金を活用できれば負担を抑えられる可能性がありますが、「自社はどの制度を使えるのか」「いつ動けばよいのか」が整理できないまま、活用の機会を逃してしまうケースも少なくありません。
本稿では、承継・M&Aの局面で選択肢となる代表的な制度、見落としやすい注意点、そして制度選定で確認したい4つの視点を整理します。

最初に押さえたい3つのポイント
- 依頼先:M&A仲介・FAの費用を事業承継・M&A補助金の対象とするには、M&A支援機関登録制度に登録された支援機関への依頼が前提です。
- タイミング:補助対象となる契約・発注は、原則として交付決定後です。交付決定前に契約した経費は、原則として補助対象外となります。
- 選択肢:承継・M&A専用の補助金だけでなく、承継後の大型投資では設備投資系の補助金を組み合わせる選択肢もあります。
承継・M&Aの局面で検討される代表的な制度
当社では、補助金制度を「大規模投資・設備投資系」「事業転換・新分野展開系」「承継・M&A活用系」「東京都・自治体制度系」の4区分で整理しています。区分の考え方は、制度選定という上流工程で解説しています。
承継・M&Aの局面では、「承継・M&A活用系」を軸に、投資の規模や所在地に応じて、他の区分の制度もあわせて検討します。
事業承継・M&A補助金(国)
事業承継やM&Aを契機とした取り組みを支援する国の制度です。2026年度の公募では、次の4枠が設けられています。
- 事業承継促進枠:親族内承継・従業員承継を予定する事業者の設備投資等
- 専門家活用枠:M&Aの際の専門家費用(仲介・FA手数料、デューデリジェンス等)
- PMI推進枠:M&A後の経営統合(PMI)にかかる専門家費用や設備投資等
- 廃業・再チャレンジ枠:事業承継・M&Aに伴う廃業等の費用
枠の構成や要件、補助上限額は公募回ごとに見直されます。最新の公募要領をご確認ください。
承継後の大型投資では、設備投資系の補助金も選択肢に
承継・M&Aを経て、新市場への進出や生産性向上のための大型の設備投資を行う場合は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金など、大規模投資・設備投資系の補助金も選択肢となります。
設備投資系の補助金では、公募回によって、事業承継やM&Aに関連する取り組みが審査上の加点項目として設けられることがあります。加点は審査における評価要素の一つであり、採択を約束するものではありません。対象要件や必要書類も公募回ごとに異なるため、承継・M&Aの時期と投資計画をあわせて確認することが重要です。
また、承継・M&Aにかかる費用と設備投資の費用とで制度を使い分ける場合は、対象経費が重複しないよう整理しておく必要があります。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(中小企業基盤整備機構)
東京都の制度
都内の中小企業であれば、東京都中小企業振興公社の制度もあわせて検討します。
- 事業承継支援助成金:事業承継に向けて外部専門家等に委託する取組(自社株式の評価、セルフ・デューデリジェンス、FA・M&A仲介事業者との契約、中核人材の確保・育成など)の経費の一部を助成します。申請前に、公社等による相談・支援を受けておく必要があります。
- 事業承継を契機とした成長支援事業:事業を承継した後継者が取り組む新規事業展開を、助成金とアドバイザー派遣で支援します。
東京都中小企業振興公社(事業承継を契機とした成長支援事業)
これらは代表例です。案件の形態や投資の規模、所在地によって、適した制度は異なります。
見落としやすい2つの注意点
M&A仲介・FA費用は、登録された支援機関への依頼が前提
事業承継・M&A補助金の専門家活用枠では、M&A仲介・FAの費用が補助対象となるのは、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録された支援機関による支援に限られます。登録されていない仲介業者・FAに依頼した場合、その費用は補助対象外です。
一方、デューデリジェンスなど仲介・FA以外の専門家費用は、登録の有無にかかわらず補助対象となり得ます。依頼先を決める前に、登録の有無と、どの費用が補助対象になるかを確認しておくことが重要です。
当社は、M&A支援機関として登録済みです。
M&A支援機関登録制度(中小企業庁)
契約・発注は、原則として交付決定後
多くの補助金では、交付決定前に契約・発注した経費は補助対象外となります。事業承継・M&A補助金でも、仲介・FAとの委託契約は交付決定日以降に締結する必要があり、直近の公募では、交付決定前の着手を認める事前着手の特例も設けられていません。
制度や公募回によっては事前着手の特例が設けられる場合もありますが、適用の可否は公募要領で個別に定められます。「相談したら、すぐに仲介契約を結ぶ」という進め方は、補助金を活用できる可能性を自ら狭めてしまうことがあります。
一方で、交付決定を待つことで、交渉の機会を逸することもあります。公募スケジュールと交付決定の見込み時期から逆算しつつ、案件の進行と補助金の活用のどちらを優先するかも含めて、契約の時期を設計することが欠かせません。
承継・M&Aの局面で確認したい4つの視点
制度選定の基本的な視点に加え、承継・M&Aの局面では、特に次の4点を確認します。
1. 承継・M&Aの形態
親族内承継、従業員承継、第三者への譲渡、譲受側としての取り組みなど、形態によって対象となる制度や枠が変わります。まず、自社がどの立場で、何を引き継ぐのかを明確にします。
2. 投資の内容と対象経費
設備投資、専門家費用、統合後の体制整備など、予定している支出が制度の対象経費に該当するかを確認します。投資計画の組み立て方によって、活用できる制度の幅が変わることがあります。
3. 時期と順番
公募スケジュール、交付決定の見込み時期、承継・M&Aのクロージング時期が噛み合うかを確認します。前述のとおり、契約・発注の順番を誤ると、補助対象外となることがあります。
4. 資金繰り
補助金は、原則として事業の実施後に支払われます。承継・M&Aに伴う支出と補助金の入金時期のずれを見込み、必要に応じて資金調達もあわせて検討します。
「承継・M&Aを進めるか」と「補助金を使うか」を、別々に考えない
承継・M&Aの検討と補助金活用の検討を切り離して進めると、依頼先の要件、契約の時期、投資のタイミングとのずれが、後から表面化することがあります。
経営判断の段階から両者を一体で整理しておけば、「どの制度を、いつ、どの順番で活用するか」を無理なく設計できます。また、整理の結果として「今は承継・M&Aを進めない」「補助金を使わない」という結論に至ることも、十分に意味のある経営判断です。
当社の支援
当社は、顧問契約と補助金申請支援を中核に、経営判断の整理、制度選定、事業計画の整理・再構成、資金戦略までを一体で設計し、必要に応じて承継・M&Aの支援もご提案しています。書類の作成にとどまらず、「申請すべきか」「どの制度を選ぶか」「どの順番で動くか」という上流の判断からご一緒することを重視しています。
当社は経営革新等支援機関として認定を受けています。また、M&A支援機関として登録済みです。承継・M&Aに伴う補助金の活用可能性を、依頼先の要件や契約の時期も含めて、検討の初期段階から整理できます。
支援の全体像はサービス紹介、費用の考え方は料金体系、当社のM&A支援の位置づけは補助金を起点とした事業承継・M&A支援をご覧ください。
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仲介・FAとの契約や設備の発注の前にご相談いただくことで、補助金活用の選択肢を残したまま、検討を進めることができます。
お問い合わせいただいた時点で契約が発生することはございません。
※ 補助金・助成金制度は、新設・改廃や公募回の変更等により、対象・要件・金額が変更となる場合があります。本稿は最終更新時点(2026年9月)の情報に基づいています。最新の要件や適用可否は、各制度の公式サイトでご確認いただくか、当社まで個別にお問い合わせください。
